3年に一度開催されているFSC総会。今回は、10月26日〜31日の5日間、パナマシティ郊外で行われました。プログラムは、全体会議、環境・社会・経済分会別会議、分会横断会議、会員総会、サイドイベントの5つに分かれ、FSCジャパンのスタッフは分会別会議以外の全てのセッションにオブザーバーとして参加することができました。
動議に対する議論と採決は会員総会で図られます。動議の一つひとつについて、討議が行われた後、オンライン投票が開始されます。投票は定足数に達するまで行われ、翌日朝まで投票期間が延期される場合は、翌日の総会開始冒頭に投票結果が発表されていました。
49の動議が提出されていましたが、取り下げや別の動議との統合、事務局のレビューによる却下などもあり、10の定款と32の方針の動議が審議されることになりました。最終的な投票結果はこちらからご覧いただけます。
総会はなかなか白熱しタイトなスケジュールでしたが、セッションの合間には、会員のみなさんがコーヒーを飲みながら談笑したり、フォトブースで写真を撮り合ったり、FSCに関連する調査研究のポスター展示を見たり、FSCの取り組みを発表する展示やオープンハウスを訪れ意見交換するなどして過ごしていました。
初日のハイライト

FSC総会2025のオープニングセレモニーが行われ、パナマ環境大臣のFSCを推進する力強いメッセージやパナマの先住民族クナ族のスピーチや伝統的な踊りで幕を開けました。世界中から対面で400人近くもの会員が一つの会場に集まりました。
総会では、まず前述のような採決までの進行方法の確認を行うことから始まりましたが、初めて参加する会員も多く少々の混乱もあり、2日目くらいまでは、動議そのものに対する意見よりは、進行に対する確認や質問も多く、進行側もそのあたりを丁寧に対応することに時間を費やしていたことから、総会前半は数十ある動議が本当に会期内に審議しきれるか心配になるほどでした。
2日目から5日目のハイライト

2日目には、グローバルな市場調査を行うIPSOSとの2025年世界消費者意識調査結果が発表されました。発表の内容はこちらからご覧いただけます。
全体会議ではFSC30周年のこれまでの歩みを振り返り、現在の課題を検証し、FSCが喫緊の課題である気候変動に対応してインパクトを、着実に、でも変革を起こすためのバランスを取りながら、どう与えていけるかといった今後の道筋を探る議論が行われました。
夜のガラディナーでは、昨年のFSC30周年を振り返り、初代事務局長のTimothy氏の功績や祝福のコメントを取り交ぜた30周年記念動画が流され、ご本人もスピーチされていました。
3日目には、2026年以降のFSCグローバル戦略を考える全体会議があり、IKEAグループの持続可能なサプライチェーンを担当するNiemela氏、ガボンとコンゴ共和国におけるFSC認証林と非FSC認証林との比較調査をリードしNature誌に掲載された論文の執筆者であるJoeri氏、女性先住民族の権利の団体の議長であり、気候変動や生物多様性の研究者でもあるチャド出身のHindou氏などからの話題提供などがありました。
総会期間中、毎朝、FSCスタッフのミーティングがありましたが、5日目にはパナマの環境大臣が内部会議に顔を出してくれました。初日にFSC認証をパナマで推進していくという力強いスピーチをしていただいたばかりでしたが、さらにFSCを推進していくための覚書の締結のためにお越しいただいたようです。
最終日のハイライト
FSCは民主的に運営されていることや先住民族の権利を大切にしていることをステークホルダーの皆さまに日々お伝えしていますが、総会はその真髄に触れる機会となりました。
民主的な意思決定と一言でいっても、社会・環境・経済、そして先住民族の立場で発言する多様な立場の方々がオンラインも含め数百人も世界中から一つの場に集まり、議論し投票に進むというプロセスを経ることになります。
この一見面倒そうなプロセスや多様性こそFSCの強みであり、いかに尊いものかを思い知らされることになりました。もちろん、誰もが問題ないと思えるような動議は可決されやすく、変化やインパクトが大きい議題ほど議論が白熱し可決させることが難しくなるため、それに期待する人は失望するかもしれません。それでもFSCというシステムに期待し、合意をめざそうと分会を超えて働きかけている姿に心が動かされました。
懸念や反対をする方々の意見も妥当だと思えるものもあり、あるいは判断しきれないことによる反対もあるのではないかと思うと、もどかしい思いもしました。
気候変動や失われる生物多様性の深刻化、国際情勢もあり、FSCの「責任ある森林管理」の守備範囲が広く複雑化していくことを感じますが、信頼され選ばれる認証制度であり続けるために、FSCジャパンとしても努力していく思いを新たにしました。

