以前から使用が禁止されていたマツクイムシ対策のフェニトロチオン系薬剤(バークサイドF油剤、スミチオン、パインサイドS油剤Dなど)や殺虫剤として使用されていたジメトエートに加えて、この改訂により新たにいくつかの薬剤の使用が禁止となります。
以下に新たに使用が禁止になった薬剤の一例を記載しますが、ここに挙げられているものが全てではありませんので、完全なリストはFSC-STD-30-001aをご覧ください。この機会に一度、現在使用している殺虫剤、殺鼠剤、忌避剤などのすべての農薬がFSCにより禁止されていないかご確認下さい。
今回新たに使用が禁止となった薬剤の例:
忌避剤:
禁止有効成分 商品名
ジラム (Ziram) コニファーなど
チウラム (ThiuramまたはThiram) ヤシマレント、ヤシマアンレスなど
殺虫剤(松枯れ対策):
禁止有効成分 商品名
カーバム(metam sodium) NCS、キルパーなど
フェンチオン (Fenthion) マウントT7.5B油剤など
チアクロプリド (Thiacloprid) エコワン3 フロアブルなど
FSCにより新たに薬剤が禁止された場合、禁止されている薬剤を使用している認証取得者は、禁止薬剤リストの発効から7ヶ月以内(今回は2015年9月10日まで)に使用を止めるか、特別使用許可(derogation)を申請する必要があります。特別使用許可は、科学的根拠(代替方法の実験結果や費用効果分析、社会・環境影響評価など)があり、特定の病害虫による環境・社会・経済的影響を最小限に止めるためにその薬剤の使用がやむを得ず、代替方法を見つけるための具体的な取組が計画・実行されている場合にのみ発行され、制限された使用方法に従った使用が許可されます。同じ状況下で同じ薬品の使用許可を求めている組織は、共同で申請することができます。
特別使用許可は、申請を出した組織に対して個別に出されるもので、同じ国の同じような組織に対して特別使用許可が出たからといって、自動的に他の組織もその薬品の使用が同じように認められるわけではありません。また、許可が出ても制限された方法を守ることが求められます。許可を受けていない組織による禁止薬品の使用が発見された場合は、即刻認証の一時停止となりますので、ご注意ください。今回の改訂により禁止された薬品を使用しており、今後も使用の継続を予定されている組織は、各認証機関までご相談ください。
特別使用許可申請の手順
殺虫剤の特別使用許可申請手順(FSC- PRO-01-004 (V2-2)に従い、特別使用許可を申請する認証取得者は、認証機関を通し、FSC本部指針・規格部(PSU)に申請書を提出する必要があります。申請が認められるには科学的根拠のほか、本当にその薬品の使用が必要か、社会的にその薬品の使用が許容されているかなどについて世論の支持が必要であり、このため、少なくとも45日間のコンサルテーションを行う必要があります。コンサルテーション対象には、地域で薬品使用の影響を受けると考えられる利害関係者や社会・環境NGO、環境、野生動物保護や林業に関係する行政機関、猟友会などが含まれます。
手順としてはまず、特定の薬品の使用について認証取得者より要請を受けた認証機関がFSC PSUに禁止薬剤の特別使用許可申請をする旨通知します。その後、申請組織は科学的根拠を集め、コンサルテーションで集まった意見を反映させた申請書を用意し、認証機関を通してPSUに提出します。申請は各認証機関が行いますが、共同で行うことも可能です。申請の手数料は1つの薬剤についての1申請につき600ユーロの基本手数料に、申請に含まれる認証取得者1組織につき350ユーロが加算されます。
FSC PSUは申請書を受理してから4週間以内に記載情報が十分なことを確認し、専門アドバイザーに回します。専門アドバイザーも4週間以内に申請の適当さを評価し、意見を添えてFSC殺虫剤委員会に提出し、委員会で判断が下されます。結論が下されるまでの間にどうしても申請をしている禁止薬剤を使う必要がある場合は、申請により暫定許可が与えられます。
認証取得者は、現在使用している薬剤を特例申請の承認の下に使用継続する他に、より危険性の低いと考えられている薬剤へ切り替えるという選択肢もあります。参考までに現時点ではFSCにより使用が禁止されていない薬剤の一例を紹介します。
現時点ではまだ使用が禁止となっていない薬剤の一例(参考情報):
忌避剤:
有効成分 商品名
イソプロチオラン(Isoprothiolane) ツリーセーブなど
殺虫剤:
有効成分 商品名
酒石酸モランテル(Morantel tartrate) グリーンガードなど
塩酸レバミゾール(Levamisol hydrochloride) センチュリーなど
除草剤:
有効成分 商品名
グリホサート(Glyphosate) ラウンドアップなど
イマザピル(Imazapyr) ケイピンエースなど
トリクロピル(Triclopyr) ザイトロンなど