2015年から始まった、FSC原則と基準第5版及び国際標準指標(IGI)に基づく、日本国内森林管理規格策定は既に国内での議論を終え、本部に最終草案及び報告書を提出し、本部との調整に入っています。最終草案は本ニュース下部からダウンロードいただけます。
しかし、この間、FSC本部では国内規格の基となる国際標準指標(IGI)の部分的な改訂について議論が進んでおりました。これは、ILOの中核的労働基準の4分野、8条約の内容をFSCの規準文書に組み込み、認証の要求事項にすることを目的としています。以下のリンクからダウンロード可能な報告書「ILOの中核的条約の原則に基づく標準基準と指標に関するFSC報告書」では、児童労働の禁止、強制労働の禁止、雇用・職業における差別の撤廃、結社の自由・団体交渉権の承認の4分野において以下の基準や指標が定められています。
1 児童労働の禁止
1.1 組織は、児童労働を使用してはならない。
1.1.1 組織は、15歳あるいは国または地域の法令で定められた最低年齢のうち高い年齢未満の労働者を雇用してはならない。ただし、1.1.2を満たす場合はその限りではない。
1.1.2 国内法令または規制で13歳から15歳の者の軽作業における雇用が許されている場合、そのような雇用は学校教育を妨害してはならず、彼らの健康や発達にも有害であってはならない。 特に、児童が義務教育法の対象とされている場合、通常の昼間勤務時間中でも学校の授業時間外に働くものとする。
1.1.3 18歳未満の者は、承認された国内法および規制内での訓練を目的とする場合を除き、危険な作業または重労働に雇用されていない。
1.1.4 組織は、最悪の形態の児童労働*を禁止するものとする。
2 あらゆる形態での強制労働の禁止
2.1 組織は、あらゆる形態での強制労働を排除しなくてはならない。
2.1.1 雇用関係は、自発的かつ相互同意に基づいており、罰則の脅威はない。
2.1.2 強制労働を示すいかなる慣行の証拠もない。これには以下のものを含むが、これに限らない。
- 物理的、及び性的暴力
- 奴隷(債務)労働
- 雇用手数料の納付や雇用開始のための保証金の支払いを含む賃金の天引き
- 移動の制限
- 旅券や身分証明書の留保
- 当局に対する告発の脅迫
3 雇用・職業における差別の撤廃
3.1 組織は、雇用及び職業において差別がないことを保証しなくてはならない。
3.1.1 雇用および職業慣行は差別的ではない。
4 結社の自由・団体交渉権の有効な効果的な承認
4.1 組織は、結社の自由及び団体交渉権を尊重しなくてはならない。
4.1.1 労働者は自らの選択により労働組織を設立または同組織に加入することができる。
4.1.2 組織は、労働者組織がその憲章および規則を作成する自由を完全に尊重する。
4.1.3 組織は、労働者が労働者組織を設立、組織に加入、あるいはこれを補助する合法的な活動に従事する権利、あるいはこれらを控える権利を尊重する。 これらの権利を行使することにより労働者を差別したり、処罰したりすることはしない。
4.1.4 組織は合法的に設立された労働者組織および/または正式に選ばれた代表者と誠意を持って交渉し、団体交渉合意に至る最善の努力をする。
4.1.5 団体交渉による合意が存在する場合は、それが実行されている。
これらの新たな基準や指標をFSC規準文書にどう反映するかという点については現在、議論が進行中です。特にIGIでは、既にこれらの要素をもつ指標もあるため、重複を避けながら既存の基準・指標をどのように修正し、要求事項を強化するかについてはまだ発表されていません。近い将来、IGIは関連指標について改訂されることになっており、国内規格では国内法令との矛盾がない限りそれらの指標の採用が奨励されています。現在策定中で未承認の国内規格については、このILO中核的労働基準に基づく指標の議論を経ないと本部からの承認は得られないとされています。
よって、国内規格策定プロセスとしては、労働者の権利に関する部分についてIGIの部分改訂を待っている状態です。これは、2018年はじめには発表される予定ですが、予定は定かではありません。IGIの部分改定後、国内で再度議論し、規格全体を再提出することになります。ただし、規格の大部分については変更ありませんので、それらの部分に関しては本部との調整を続けていく予定です。
また、ILOの基本条約の内容を反映する要求事項については、将来的にはIGIのみならず、CoC規格FSC-STD-40-004や管理木材規格FSC-STD-40-005及びFSC-STD-30-010にも反映される見込みですが、これらの修正についても詳細は明らかにはなっておりません。