FSCジャパン(特定非営利活動法人 日本森林管理協議会、代表:太田猛彦)が普及啓発を行う国際的な森林認証制度FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)において、新築戸建住宅「物語のある家」が、外壁や内装材など建物の一部に国内産のFSC認証材を使用したFSC部分プロジェクト認証を2017年11月10日(金)に取得しました。新築戸建住宅でのFSCプロジェクト認証取得は日本初です。
新築戸建住宅「物語のある家」は、環境コミュニケーションのプロボノ団体である一般社団法人CEPAジャパン代表川廷昌弘氏が個人で建築した住宅です。川廷氏は、安価な外国産材の流入による国産材の価格低下、それによる林業に担い手の減少や国内の森林の荒廃を危惧し、適切な森林管理が行われているFSC認証の森林の木材利用を促すため、施工を依頼した工務店の協力を得て自らが住まう個人住宅で国内産のFSC認証の木材を積極的に取り入れました。
現在日本国内でFSC認証を受けている森林は36件(2017年11月13日時点)ですが、今回の住宅では、川廷氏が復興支援から関わっている宮城県の「南三陸杉」、山梨県のカラマツの2件の森林の認証材をプロジェクト認証の対象として使用しています。
FSCプロジェクト認証は、建造物や船、イベント会場など一度しか作らないものに対する認証で、全体認証と部分認証の2種類があります。全体認証は、プロジェクト全体の木質原材料の費用または材積の50%以上がFSC認証材またはポストコンシューマー回収原材料であることに対する認証、部分認証は対象部分が100%FSC認証材であることを証明する認証です。
今回の新築戸建住宅での部分認証取得は、日本初の事例です。住宅の材積の多くを占める部分に石膏ボードなどがあり、戸建て住宅で全体認証を取得することは難しいため部分認証となりました。なお、三重県速水林業の尾鷲ヒノキ等、プロジェクト認証の対象以外の部分はすべて産地証明などを取り寄せた国産材で、どの地域で育まれた木材かすべて把握できるようになっています。
住宅に使用したプロジェクト認証の対象となるFSC認証木材の内訳は以下のとおりです。これらの木材の調達は、住宅の施工を依頼した工務店ホームスイートホームメイド社長の石川秀一郎氏と設計の遠藤良行氏の協力により、新たな調達ルートの確保に挑戦したことで実現しました。
設計者名 :遠藤良行
施工社名 :有限会社ホームスイートホームメイド
敷地面積 :86.53㎡
延床面積 :87.85㎡
構造・規模 :木造2階建
(国内計20件、海外計125件 ※2017年11月13日時点)
FSCジャパンは、今後もさまざまな企業や団体の皆様とともに、それぞれのネットワークを通じてより幅広い層へFSC認証の普及を行ってまいります。

外壁や内装に使用している南三陸杉は、川廷氏が今年3月に実際に現地の森林に赴き、FSC認証取得者である南三陸森林管理協議会の事務局長であり、地域の木材の活性化に取り組む若手林業家・佐藤太一氏と丸平木材代表取締役の小野寺邦夫氏とともに、住宅の建材に適切な木を選び伐採する「伐倒式」を行ったものです

工務店ホームスイートホームメイトは、家づくりを職人任せにするのではなく、施主が自らも手掛ける“セミセルフビルド”を推奨しています。
今回”セミセルフビルド”で手掛けたのは、漆喰塗りの作業です。川廷氏が友人・知人に声を掛け、DIYアドバイザー川上大祐氏の協力を得ながら、漆喰が木材などにつかないようにテープ貼り(マスキング)をする作業から、下地のパテ塗り、そしてコテで漆喰を塗る作業に約3週間で合計55名が携わりました。使用した漆喰は、湿気を調整してくれる北海道のホタテの殻を砕いたもので、人にも自然にもやさしい素材です。