世界中で先住民族は政府による弾圧、拷問、集団虐殺などの困難な状況に直面しています。これらの虐待はFSCにとって重要な国でも起こっています。FSC国際理事のLarry Josephと、FSC先住民族常設委員会(PIPC)のメンバーであるAnders Blomが第14回国連先住民問題に関する常設フォーラム(ニューヨーク、2015年4月20日~5月1日)に「単純だが重要な」質問への回答を得るために参加しました。

カナダ北西部のウィツウィテン民族およびダケル(キャリアー)民族にルーツを持つ先住民族であるLarry Josephは北半球社会分会を代表するFSC理事です。1997年に京都で第3回気候変動枠組条約締約国会議においてスピーチをして以来、常にカナダの先住民族を代表して、国連気候変動枠組み条約の科学上及び技術上の助言に関する補助機関会合、実施に関する補助機関会合において先住民族に関する問題を取り上げてきました。

彼が第14回国連先住民問題に関する常設フォーラムに参加した目的は以下の項目に関する回答を得るためです:

1.    国連機関、プログラム、基金によってどのように先住民族が保護されるのか?
2.    国連機関と国連先住民問題に関する常設フォーラムがどのようにFSCとPIPCに対して世界中の先住民族の状況に関する最新情報を提供できるか?情報には先住民族の権利と関心の保護、事前に十分な情報を与えられた上での自由意思に基づく同意の実施状況を含む。
3.    世界中、特にFSCにとって重要な国とテリトリーにおいて、先住民族の権利に関する現状は?
4.    国連先住民問題に関する常設フォーラムのどのような教訓がFSC理事、FSC、PIPCに活かされるか?

JosephとBlomはサイドイベントにおいてFSCとPIPCの先住民族のガバナンスに対するアプローチを発表しました。FSC理事会の常設委員会として、PIPCはFSC制度全般に渡り先住民族、森林管理、FSC認証に影響のある決定に関するガイダンスを示しています。JosephとBlomは特にFSCが重要視している「事前に十分な情報を与えられた上での自由意思に基づく同意」のコンセプトに力を入れて説明をしました。Josephによると、聞いていた人は多くはないものの、メッセージは肯定的に受けとめられ尊重されたとのことです。「事前に十分な情報を与えられた上での自由意思に基づく同意」のコンセプトは特に、アジア開発銀行、国際自然保護連合、国連、アメリカ合衆国国際開発庁の関心を引き、FSCがこの分野で世界のリーダーであるという認識を再確認させました。

85ものサイドイベントが開催される中、公式会議においては多くの先住民族人口を抱える国における先住民族の代表や団体から提起されて問題が取り上げられていました。メッセージは一貫して、先住民族は継続的に政府の弾圧、差別、貧困、搾取、拷問、集団虐殺、民族浄化等の困難に直面しているというものでした。

例えば、タンザニアのマサイは何十年にも渡り民族浄化に苦しめられています。最近はMabwegere村においてマサイ民族が攻撃されました。この攻撃は2015年1月28日のモロゴロの農民埋葬直後に始まりました。葬式の最中に政治家により攻撃が指示されたのです。

マサイ民族であるAdam Ole Mwarabu (東アフリカのPIPCメンバー)は、彼らの窮地について国際社会に知ってもらいたく、第14回国連先住民問題に関する常設フォーラムに参加しました。彼の参加にあたりEU機関が財政的な支援をしています。

Larry Josephは、Mwarabuが先住民族の人権と基本的自由に関する特別報告者であるVictoria Tauli Corpuzに会い、マサイ民族が直面する困難について話をするためのサポートをしました。MwarabuはVictoria Tauli Corpuzに対して、タンザニアの現状について文書で報告をする約束し、複数の国連機関がこの問題の解決に関わることが合意されました。
 

第14回国連先住民問題に関する常設フォーラムの終了時には国際連合経済社会理事会に対して9つの報告書草案が送られました。これらの報告書にはいくつかの提案、勧告、決定事項が含まれています。
では、文頭のJosephの質問が回答されたのか、見てみましょう。

1.    先住民族文書・調査・情報センター(doCip)および国連先住民のための任意基金が、先住民族の人権侵害を報告するための手順を構築し、国連の分野別の専門家が報告された事例をフォローすることとなった。国連開発計画は「事前に十分な情報を与えられた上での自由意思に基づく同意」および独自の社会環境規格への適合をサポートを受けるための前提条件とした。世界銀行は先住民族の発展のための規格作りをしているところである。
2.    先住民族の権利はオーストラリアとブラジルにおいて特に脅かされている。両国ともFSCにとって重要な国である。
3.    FSCとPIPCは国連先住民族問題に関する常設フォーラムのこれからの活動を追っていく必要がある。特にポスト2015開発課題に関与し、2016年の国連先住民族問題に関する常設フォーラムではより積極的に重要な役割を果たす必要がある。

小規模林家にとってはどのような意味がある?
大規模な林業会社により先住民族が森林から追い出されたり、伝統的な森林利用を妨げられることがあります。新しい報告手順により、このような人権侵害について世界的な権威に対して報告をする仕組みができました。FSC、国連開発計画、世界銀行の基準、特に「事前に十分な情報を与えられた上での自由意思に基づく同意」の基準は、先住民族が森林や他の自然資源を使う権利を保護するための仕組みです。

元の記事(英語):https://ic.fsc.org/newsroom.9.1193.htm